第3章 ♡そこは狂った愛の底♡ ※ヤンデレ
夢乃は呆然と立ち尽くし、しばらく動かなかった。
駆け落ちや売女という言葉を聞くのは初めてだったけれど、自分の母親を悪く言われたことだけははっきりと分かる。
(違うもん……お母さんは、ばいたなんかじゃないもん)
悔しさで、スカートを握る手にギュッと込められていく。
大丈夫、泣かない泣かないと、心に言い聞かせて、意地悪な子供の言ったことは忘れようとしていた。
けれど、数日後。
「やーい。もらわれっ子、お前も媚び売ってあの家の子になったんやろ?」
再びガキ大将達が一人でいる夢乃を見つけてからかってきた。
「売女の子やから、おにーちゃんに擦り寄るんも上手やろなぁ」
理不尽な言われようだが、大人しい性格の夢乃は言い返すことも逃げ出すことも出来ずに、ただただ戸惑った顔で下を向くだけだ。
何も反応がないことに苛立ったのか、ガキ大将は
「おい!聞いてへんのか!」
と、夢乃の肩を押し突き飛ばした。
「きゃ!」
悲鳴を上げて地面へと倒れる。
こんな乱暴なことをされたのは生まれて初めてで、驚きで尻餅をついたまま動くことができなかった。
おまけに目に砂が入って痛い。
突き飛ばしたガキ大将も軽く押したつもりが、ここまで大袈裟なことになるとは思ってなかったので、謝ることもできず気まずい空気が流れる。