第1章 ♡うちの姪がビッチすぎて困る♡ 完
……アイツも大人になったな。まぁ、もう十年以上は会ってないから当たり前か。
十九歳の妹がいきなり男と家を出て行ったのは、俺が二十一の時だった。
まさかその後子供を産んでいたことにも驚きだが、長い間音信不通だった兄にいきなり娘を押し付けて、彼氏と海の向こうへ旅立って行ったことが何よりも驚きだ。
自由奔放なのは今も相変わらずらしい。
「涼香……お母さんは俺のことをどうやって調べたんだ?」
「今の時代、捜す方法ならいくらでもあるって言ってました」
「…………君のお父さんは?」
「パパは私が産まれてすぐに別れたので顔も知りません」
「…………なるほど」
両親と涼香は仲が悪く、絶縁状態だ。
よって、夢乃の保護者第一候補は〝俺〟ということになる。
「あの…学校のこととか、必要な書類はここに」
バッグから取り出したファイルを差し出し、夢乃はぎこちなくペコりと頭を下げた。
「もうおじさんしか頼れる人がいなくて……私を、ここに置いてください」
濡れた子犬みたいなその姿に、帰ってくれとは、とても言えなかった。