第2章 ♡アラブの王様に飼われるお話♡
「出来ればライール様も早々に捨ててくださるとありがたいのですが、飼い主に見放された亜種など嫌な予感しかしません」
カイン様は難しい顔をしているけれど、ライール様は気にも留めない様子で私の髪を触っている。
「この子は愛玩される為だけに作られた亜種だよ。人間の勝手な欲望で生まれて、そして死ぬだなんてあまりにも無慈悲だと思わないかい?それにこの子は生きたがっていた。捨てるくらいなら私が貰っても構わないだろ」
ライール様は慈しむように、私の頭を撫でた。
「これほど愛くるしい存在を、傍に置かない理由はないよ」
きょとんとする私をライール様は手を引いて、自身の膝に座らせた。
「私はこのアライムの国王。ライール・イル・シャムーン。なんでも好きに呼ぶといい」
「………ラ、イール…さ、ま」
たどたどしく名前を呼ぶと優しい笑みを向けられて、心臓がドキっとする。
「君にも名前が必要だね………よし、今日から君を夢乃と呼ぶことにしよう。私の可愛い子猫だからね」
「また安易な……」
夢乃というのは、アライムの神話に出てくる仔猫の名前だと後から知った。
だけど、その時の私は名前を貰えたことが嬉しくて、頬を桃色に染めながらライール様に寄りかかる。