第2章 ♡アラブの王様に飼われるお話♡
ライールは確か、あの男の人の名前だ。
あらいむ?は分からない、あしゅというのも…名前を聞かれているということは、あしゅが私の名前じゃないということだけは分かった。
言葉を詰まらせる私に、男は眉を寄せる。
「名前が無いのか?なら、お前を捨てた主人は誰かくらい言えるだろう」
主人?なんのことを言っているのだろう。
「……な、も……覚…て、な……」
眠っている間に水を飲ませてくれたのだろうか、喉は乾いてないけれど、なぜだか上手く話せない。
それに記憶を無くした今、男の質問に満足するような答えを返すことも出来なかった。
男は深々と溜息をついて、仕方がないといった様子で傍に置いてあった小さなベルを鳴らした。