第2章 ♡アラブの王様に飼われるお話♡
(どうして…………)
どうして私はこんな所に、こんな姿で捨てられたように倒れているのだろう。
必死に思い出そうとするけれど、脳裏に白い霧がかかったようにぼやけて何も思い出せない。
身にまとっている衣服もボロボロな粗末な布で、砂漠の熱からまったく守ってくれない。
喉がカラカラに乾いて、暑くて、視界が点滅する。
……死んでしまうのだろうか。
そんなことを、ぼんやりと思った。
何も思い出せずに、自分が誰なのかも分からない状況で、目を覚ましたかと思えばすでに命の危機に晒されている。
何も分からないくせに、死ぬということだけは分かる。
いっそ、何一つ分からず何も感じることも無ければ死への恐怖も感じずに済んだというのに。
そんなことを考えていた時、遠くの方で音がした。