第2章 ♡アラブの王様に飼われるお話♡
音──そう音だ。
何が近付いてくるような、そんな確証のない予感がした。
「おや、こんな砂漠の真ん中で眠っていると死んでしまうよ」
声が聞こえる。
低くて優しい、男の人の声だった。
その次に、男とはまた別の人物が声を上げる。
「この者は亜種では?どう見ても捨てられてます。関わらない方がいいですよ、ライール様」
あしゅ?……何を言っているのか分からない。
「確かに美しい顔立ちをしている。愛玩用の亜種、というところか」
ザッと分厚い砂の地面を踏み締める足音がして、肩を掴まれたかと思うとを仰向けにさせられ上半身を起こされた。
「君に選ばせてあげるよ」
選ぶ……?何、を?
太陽の光が反射して男の人の顔は見えない。
「このまま死んでしまうか、私に生かされるか。
君はどちらを選ぶ?」
目の前にいるのは救いの神か、それとも死へと導く死神か。