第3章 ♡そこは狂った愛の底♡ ※ヤンデレ
* 夢乃視点 *
私が京都へやってきてから、十三年の月日が経った。
歳は十八になり、零一お兄様は二十八歳になっていた。
大学を卒業して、外国へと留学していたお兄様は帰国して、この春より屋敷から仕事へと通うことになった。
五年ほど義兄から離れた生活に慣れていた私は、かつてこの身に受けていたことを思い返し、またどんな意地悪をされるのかと思うと怖くて仕方がなかった。
零一お兄様を迎える宴会が盛大に開かれる。
留学を終え、品のいい洋装で現れた義兄に家中が沸き立った。
「夢乃。ただいま」
玄関先で出迎えた両親への挨拶後、零一お兄様が私に微笑みかけた。
帰ってきたお兄様は見違えるように大人の男の人になっていて、綺麗な顔立ちは変わっていないけれど幼さは消えて、端正な顔立ちになっていた。
冷たい眼差しも柔らかで、振る舞いも紳士そのものだ。
けれど、私は知っている。
表面的には完璧な跡継ぎに見えるけれど、その笑顔の裏には悪魔が潜んでいることに。
「……おかえりなさいませ。お兄様」
油断してはいけない。
視線を逸らして、申し訳程度に挨拶をするとさっと下がる。
これから再び屋敷で暮らすのだから、こんな風に逃げてばかりはいられないと分かっているけれど、私には零一お兄様と直接喋る勇気すらもなかった。