第3章 ♡そこは狂った愛の底♡ ※ヤンデレ
「なんや、残念やわぁ。夢乃ちゃんはええなぁ。あんなカッコよくて優しいお兄ちゃんがいて」
「ほんまやで私の兄様なんて意地悪ばかりするんよ。零一お兄様と取り替えて欲しいわぁ」
「ウチこの前、友達と河原町を歩いていたら、零一さんに会ったんよ。いつも夢乃ちゃんと遊んでくれてありがとねってお礼言われちゃった!友達もみんな零一さんのこと素直や言うて褒めてたで」
皆が口々に零一を賞賛するが、夢乃は控えめな笑みを浮かべるのに精一杯だった。
零一の本性は夢乃だけが知っている。
これだけ外で完璧に振る舞えるのは、家の中で自分を虐めて憂さ晴らしをしているのではないか、とさえ思えた。
夕方になり、来客が帰っていくと夢乃は夕飯の時間になるまで園庭を散歩することにした。
紅色の生地に桜や鞠の描かれた着物に、金色の帯を締めた夢乃が袖を小さく揺らしながら小池の石を踏んで歩いていると。
「夢乃」
と、耳に染み込んだ声にビクリと身体を震わせる。