第3章 ♡そこは狂った愛の底♡ ※ヤンデレ
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それから月日は流れ、夢乃は十二歳になった。
その頃には零一も大学生になり、家を継ぐ為に勉学や稽古に忙しい日々を送っている。
家に帰って来ない日もあった為、前ほど夢乃と一緒にいることもはなくなったが、その変わりに夢乃への執着が増してしまったのである。
零一は頭が回るので、大人達に容易く気付かれることはしない、表面上はあくまで優しく面倒見のいい兄であり、周りからも仲のいい兄妹だと認知されている。
だが、二人きりになると零一は夢乃に執拗な嫌がらせをするのであった。
ある日の桃の節句の時、親戚や会社の重役を屋敷に呼んでお雛様を眺めがら宴会があった。
大人達が白酒を楽しむ傍らで、子供だけが集まって遊んでいると話題はなぜか零一のことになっていた。
「ねぇ、夢乃ちゃん、零一兄様はおらんの?」
「え……あ、うん。今日は朝からお出掛けしてて…」
喉に小石がつかえたように小声で答えると、従姉妹達は一斉に残念な声を漏らした。