第2章 幕間~紡ぎ歌(胡蝶しのぶ編)
「私の顔になにかついています?」
「ううん。あのさ・・・」
汐は目を伏せた後、意を決したように口を開いた。
「しのぶさんが何を背負って、どんな覚悟で今までやってきたかは、あたしには全部わかんないけどさ・・・。せめて、せめて体調悪い時くらいはやめたら?」
――その、気持ち悪い笑顔。
「・・・え?」
心臓を鷲掴みにされたような衝撃が、しのぶの身体を駆け抜けた。その顔にはいつもの笑顔はなく、心の底から驚いたような顔だった。
「本当はあんまりこんなこと言いたくなかったけれど、ずっと気になってた。初めて会った時から、しのぶさんの"目"と笑顔の違和感に」
汐はしのぶの顔を見据えながら、はっきりと言った。
「いつも無理して笑っている感じがして、不自然で気味が悪かった。"目"と表情が全然合ってなくて気持ち悪かった。でも、それがしのぶさんなんだって思って、言えなかった」
「あなたにはそんな風に見えていたんですね」
しのぶはそう言って力なく笑った。そして改めて、汐の洞察力の高さを失念していたことを悔いた。
「そこまで見抜かれているなら、もう隠す必要もありませんね」
しのぶは観念したように溜息をつくと、汐の目を見ながら言った。