第9章 二人の少女<肆>
皆から遠く離れた場所。柱の影から、黒死牟に銃口を向けていたのは玄弥。
戦いのさなかで落ちた黒死牟の一部を身体に取り込んだため、その姿は彼に酷似していた。
微かに震えながらも、玄弥はその視線を黒死牟にむけ、そして。
弾丸を放った。
音と同時に気づいた黒死牟は、息を乱しながらも飛んできた銃弾を刀で弾いた。しかし、それはまるで生き物のように軌道を変え、肩と腕に命中した。
視線を移せば、そこには自分と似た玄弥の姿を捕らえ、彼の構えている銃には自身の刀とよく似た目玉が蠢いていた。
それを認識した瞬間、黒死牟の身体から突如木の根が生え身体を拘束した。
(木・・・・!根を張って動けぬ・・・!それにこの忌々しい歌のせいで、思考がまとまらぬ・・・!!)
「があああああ!!!!」
黒死牟は雄たけびを上げ、その勢いで悲鳴嶼と実弥の動きが一瞬止まった。その一瞬の隙を、見逃さなかった。
黒死牟が身体に力を込めたその瞬間。一筋の青い閃光が目の前を走った。
黒死牟の目に映ったのは、腹立たしい程美しい、どこまでも深い青。
汐の群青色の刀が、彼の頸を穿っていた。
青いその目から、大粒の涙を流して。