第8章 二人の少女<参>
そしてさらに、別の場所では。
無一郎、玄弥、実弥、悲鳴嶼の四人は、上弦の壱の鬼、黒死牟と対峙していた。
皆はすでに深手を負い、無一郎にいたっては片腕を斬り落とされ、右肩を刀で貫かれ柱にはりつけにされていた。
それを救おうとした玄弥も、黒死牟の手で切り刻まれてしまい、激痛に喘いでいた。
そんな絶体絶命な状況に、玄弥の実兄である実弥や、師である悲鳴嶼も駆け付けた。
しかし、彼等の力をもってしても、黒死牟の着物を裂くくらいしかできなかった。
実弥の血は特殊で、鬼を酩酊させる効果がある。だが、黒死牟に通用したのはほんの僅かで、その後はほとんど効かない。
しかもとんでもない長さの刀を片手で軽々しく振るうだけではなく、予備動作もなしに斬撃が繰り出される。
既に柱二人の身体は傷だらけで、攻撃を避けるだけで精いっぱいだった。
そんな状況に、無一郎と玄弥は悔し気に唇をかんだ。
せめて、せめて少しだけでもあの鬼の動きを鈍らせることができたら。
少しでも、あの二人の動きをよくすることができたら。
自分たちが何とか出来たら、と、思っていた。