第8章 二人の少女<参>
一方そのころ。
汐の師、甘露寺蜜璃は伊黒と行動を共にしていた。
不規則に動く壁や床をかわし、襲い来る鬼を蹴散らしながら進んでいると、
「あーーーーっ!!」
何かを見つけた蜜璃は、思わず声を上げた。
「見つけた!伊黒さん、あっち!」
蜜璃は伊黒を呼びながら、ある一点を指さした。そこには、壁に髪の毛を這わせ、琵琶をかき鳴らしている女の鬼が鎮座していた。
その顔には、肆と刻まれた大きな目が一つあった。新たな上弦の肆、鳴女である。
「上弦の肆だわ!!」
蜜璃の言葉に、伊黒は忌々しそうに顔をしかめた。
(上弦の肆・・・!!時透達が倒したはず。もう補充されているのか)
(私より年下のしのぶちゃんが命を懸けて頑張ったのよ。それに、どこかでしおちゃんもきっと戦ってる・・・!だから・・・!)
「私も、頑張らなくちゃ!!」
蜜璃は決意を胸に抱くと、その場を飛び出し、鳴女に斬りかかった。しかし鳴女が琵琶を鳴らすと、二人の間に扉が出現し、蜜璃は勢いあまって激突した。
その反動で蜜璃の身体は下に投げ出され、鼻血を出しながら、そのまま成す術もなく落ちて行く。
そんな彼女を、鳴女は塵を見るかのような、冷ややかな視線を向けていた。
(はっ・・・恥ずかしいわ、恥ずかしいわ!!ちょっと焦っちゃった、力みすぎちゃった。私何してるのかしら!!)
蜜璃は鼻を抑えながらも、何とかこの状況を打開しようと、あたりを見回した、その時だった。