第2章 幕間~紡ぎ歌(胡蝶しのぶ編)
「あ、汐・・・さん・・・?」
しのぶはか細い声で汐を見上げるが、その目は明らかに焦点があっておらず、素人目で見ても尋常ではないことはわかった。
「ああ、すみません。少し眩暈を起こしてしまって。でも大丈夫ですよ。心配しないでください」
しのぶはそう言って笑うと、机に手をかけて何とか立ち上がろうとした。だが、その足ははっきりとわかる程震えており、自力で立てるとは思えない。
「ちょっと、全然大丈夫に見えないわよ。足が震えているじゃない!」
「大丈夫ですから、私に構わないでください」
しのぶはそう言って汐の手を振り払った。だが、やはり大丈夫には到底見えなかった
「しのぶさん、ごめん!」
汐はそういう否や、ふらつくしのぶの身体を抱き上げた。
「!?」
しのぶは驚いた顔で汐を見、慌てた様子で言った。
「な、何をするんですか!?大丈夫ですから、おろしてください!」
しかし汐はしのぶの言葉を無視すると、寝室の方へ向かおうとした。
「聞こえませんか!?下ろしてと言っているんです!!」
しのぶは先程よりも強い口調で言うが、汐は聞き入れない。
「下ろしなさい!!」
しのぶが強い命令口調で言うと、汐は足を止めてしのぶを睨みつけた。
「うるさい!!」
汐の大声に、しのぶは思わず肩を震わせた。
「こんな顔色の人間がいるか!!体調が悪いのに柱もなにも関係あるか!!」
汐はしのぶを怒鳴りつけると、そのまま寝室へと運び込んだ。