第5章 無限城<参>
汐は義勇に初めて名前を呼ばれたことに驚きつつも、にっこりと満面の笑みを浮かべて言った。
「大丈夫。いい女はそう簡単に死にやしないのよ。だからさっさと行く!」
義勇は汐をしばらく見つめた後、踵を返し、炭治郎の元へと向かった。
一人残った汐は、迫りくる気配に鳥肌を立てつつも刀を握りなおした。
(来る・・・!)
汐は殺意を全身に纏い、気配に備えて大きく息を吸った。
すると襖が音もなく開き、そこから一つの影がぬうっと姿現した。
その影に汐は息をのみ、目を大きみ開いた。
「ア゛・・・・ア゛・・・」
そこにいたのは、全身がズタズタに斬り裂かれ、腐った水のような悪臭を漂わせる奇妙な生き物がいた。
「タス・・・ケテ・・・!タスケ・・・テ・・・!」
その生き物は懇願するように両腕を汐の方に伸ばし、目のあたりからは涙をこぼしていた。
「まさか・・・、まさかあんたは・・・!!」
汐は体中をぶるぶると震わせると、思わず口を動かした。
「絹・・・・?」
汐がその名前を呼んだ瞬間。
轟音が響き渡った。