第5章 無限城<参>
(炭治郎・・・)
その雄姿に義勇は思わず言葉を失った。
(格段に技が練り上げられている。大海原の歌のせいもあるだろうが、それでもここまで動けるとは・・・)
先程の汐の反応速度と言い、炭治郎の動きと言い、義勇は自分の弟妹弟子の急成長に驚きを隠せないでいた。
初めて二人と出会ったあの日。禰豆子以外の家族を殺された炭治郎は雪の中で絶望し、頭を垂れて命乞いをするしかなかった。
だが今は、命を、尊厳を奪われない為に、自分の力で戦っている。
そして汐も、あの日最愛の父親を自分の手で討ち、憎しみと殺意に捕らわれていた。
だが今は、愛する者を守るため、自分の運命に決着をつける為に戦っている。
それは猗窩座も同じだったらしく、炭治郎と汐を交互に見やると表情を緩めた。
「"この二人は弱くない、侮辱するな"」
猗窩座が呟いた言葉に、二人は聞き覚えがあった。それは、かつて煉獄が対峙した時に放った言葉だった。
「杏寿郎の言葉は正しかったと認めよう。俺は本来、女と戦う趣味はないが、お前達は確かに弱くなかった。敬意を表する」
猗窩座は汐と炭治郎を交互に見据えると、畳が砕ける程強く足を踏み込んだ。
――術式展開
猗窩座の足元に、雪の結晶のような陣が展開され、鬼の気配が強まった。
「さあ、始めようか。宴の時間だ」
猗窩座は嬉しそうに口元を歪めると、すぐさま動き出した。