第4章 無限城<弐>
汐達が進もうとすると、突然足元の障子が開き身体が大きく傾く。それをぎりぎりで躱すと、今度は壁や天井がせり出し、容赦なく押しつぶそうとしてきた。
「気を抜くな!!」
「はい!!」
「ええ!!」
義勇の声が飛び、汐達は声を上げた。
建物はまるで生き物のように動き、汐達を分断させ、場合によっては始末しようとしていた。
(できるだけ他の隊士達と合流して離れず、無惨の所へ向かわなければ)
炭治郎は焦る心を抑えつつ、炭治郎は前を走る汐と義勇の背中を見つめる。
(珠世さんがいつまで耐えられるか分からない。だけど無惨の居場所は・・・)
「汐、無惨の位置は遠いのか?早く・・・」
だが、炭治郎が次の言葉を紡ぐ前に、鴉の鋭い声が響き渡った。
「カアアアーッ、死亡!!胡蝶シノブ、死亡!!上弦ノ弐ト格闘ノ末死亡―――ッ!!!」
その報せが耳と心を容赦なく突き刺し、汐と炭治郎は勿論のこと、義勇ですら目を見開いた。
それと同時に、しのぶの笑顔が蘇り、炭治郎の両目から涙があふれた。
その時だった。
突然鈍い音が響き、炭治郎と義勇は足を止めた。見れば、汐が壁に拳を打ち付けていた。
「クソがっ・・・!!」
炭治郎には見えなかったが、汐は零れそうなほど涙を溜め、歯を食いしばって背中を震わせていた。
拳からは血の雫が零れ落ち、手首を伝って流れ落ちる。
汐は思い出していた。
かつてしのぶが過労で倒れた際、その場に居合わせた汐が臨時で看病をすることになったことを。