第4章 無限城<弐>
汐達が無限城に落とされてから、だいぶ時間が経過していた。
鬼の匂いが鼻をつき、炭治郎は僅かに吐き気を覚えながらも襲い来る鬼を蹴散らしていた。
鬼は基本的に群れないため、このような大群と戦う機会はめったにない。
だからこそ、慣れない戦いに少しばかり焦っていた。
だが、義勇の寸分狂いのない戦い方と、汐の援護のお陰で戦えていた。
(鬼の匂いが満ちていて、無惨の匂いを辿れない。無惨は一体どこにいるんだ・・・?)
産屋敷邸で無惨の姿を見た時、傍には珠世がいた。遠目で見ただけだが、何らかの方法で無惨を押さえつけていたようにも見えた。
鬼の群れを蹴散らしている時、ふと、汐が何かに気づいたように顔を上げた。
「汐?」
怪訝そうな顔をする炭治郎だが、汐からの殺意の匂いを感じて身体が震えた。
今までにない程冷たく、深く、重い殺意。まるですべてを引きずり込む、渦潮のように。
「・・・あっちよ」
「あっちって、無惨の居場所がわかるのか?」
炭治郎が尋ねると、汐は深くうなずいた。
「あたしの中の、ウタカタノ花の殺意が教えてくれているみたいなの。"奴はこの先だ。早く殺せ"って」
そう言う汐の目は血走り、顔には血管が浮き出ていた。だが、怒りに満ちているはずのその口元には歪んだ笑みが浮かび、狂気もにじみ出ていた。
「いくわよ、あんたたち」
汐はそう言って走り出し、その隣を義勇が走り、炭治郎も後から続く。
しかしこの城の脅威は鬼だけではなかった。