第3章 無限城<壱>
更に別の場所では。
四方を襖や障子、畳などで囲まれ哉部屋で、実弥は一人静かに鎮座していた。
(お館様・・・、守れなかった・・・)
その顔には表情はなく、ただ後悔と苦悩だけが実弥を支配していた。
しかしそんな彼に、鬼は容赦なく牙と爪を向けた。
そんな鬼を実弥は立ち上がることなく、右手一本で振るった刀で細切れにした。
だが、それを合図にしたのか四方八方から鬼が次々にわき出し、実弥を取り囲む。
「次から次に湧く。塵共・・・。かかって来いやァ・・・」
実弥はゆらりと立ち上がると、鬼の群れに向かって顔を上げた。
「皆殺しにしてやる」
その表情は涙を流しながらも笑う、鬼を屠る者のものだった。
更に別の場所では。
「猪突猛進!!」
凄まじい足音を立てながら、獣の如く場内を駆け抜ける者がいた。
猪の皮を頭からかぶった少年、伊之助だった。
彼もまた、この無限城に落とされていたのだった。
「なんか突然わけわからんところに来たが、バカスカ鬼が出てくるもんで、修行の成果を試すのに丁度いいぜぇぇ!!」
伊之助は状況がわかっていないのか、笑いながら鬼を蹴散らしていく。
しかしその動きは以前よりも遥かに精錬されており、下弦ほどの実力の鬼を軽々しく打倒していった。
この無限城に落とされているのは、汐達や柱達だけではない。
玄弥、カナヲ、善逸もまた、別の場所だが落とされており、そのほかに何十人科の隊士達も落とされていた。
(何なんだ、ここは・・・。鬼の根城か?)
玄弥は次々に襲ってくる鬼を何とか倒しながらも、あたりを見回し走り続けていた。
(汐や炭治郎、他のみんなは?)
混乱しながらも玄弥は、大切な人達の無事を祈りながら足を動かす。
(兄貴・・・、兄貴も無事でいてくれ・・・・)