第3章 無限城<壱>
更に別の場所では。
鬼の屍が灰となって消える中を、二つの人影が進んでいく。
一人は悲鳴嶼で、もう一人は無一郎。二人が無惨に斬りかかった時に近くにいたため、共に行動していた。
「凄い量の鬼ですね」
悲鳴嶼の背中を追いながら、無一郎が呟く。
「下弦程度の力を"持たされて"いるようだな。これで私達を消耗させるつもりなのだ・・・」
「・・・お館様は?」
無一郎が問いかけると、悲鳴嶼は淡々と答えた。
「一足先に逝かれた。堂々たる最期だった」
静かに紡がれた言葉は、無一郎の胸を締め付けた。
「あの方が鬼に見つかるような失敗をするとは思えない」
無一郎はずっと気になっていた疑問を口にした。
「・・・自ら囮に?」
その言葉に悲鳴嶼は、少し間を置いた後答えた。
「・・・、そうだ。余命幾許もなかったために」
「・・・・・」
無一郎の表情は引きつり、顔は青くなっていた。
(お館様・・・)
無一郎は思い出していた。記憶を取り戻し、失っていた過去を。
「お館様は、僕が鬼に襲われて生死の境をさ迷っていた時、ずっと励ましてくださった。今際の際の隊士たちには同じくそうしていた・・・。父のように」
無一郎の脳裏に浮かぶのは、瀕死の重傷を負った自分を見まいに来てくれていた時の事と、意識不明だった炭治郎と汐の元へ訪れていた輝哉の姿。
「ああ、知っている」
悲鳴嶼は振り返らないまま静かに答えた。
「無惨は兄だけでなく、僕たちの父まで奪った。あいつ・・・、無惨・・・!!嬲り殺しにしてやる。地獄を見せてやる」
無一郎は両目から涙をこぼしながら、怒りに震える声で言った。
「安心しろ・・・。皆同じ思いだ」
淡々と答える悲鳴嶼だが、その顔には修羅の如き怒りが宿っていた。