第3章 無限城<壱>
「・・・・」
塵と化し消えていく鬼の屍を背に、炭治郎は何とも言えない表情で口をつぐんだ。
(義勇さんが凄い・・・)
炭治郎は淡々と刀を納める義勇を見て、顔を青くしながら汗を流した。
(俺の僅かな動きを見て何の技出すか把握。その後に自分も技を出して、お互いが斬り合わないように動く)
それから、と。炭治郎は義勇の表情を見て、さらに顔を強張らせた。
(この人やばい。どういう気持ちの顔これ)
相も変わらず義勇の全く読めない表情に困惑するも、義勇は顔を崩すこともなく歩きだした。
「行くぞ」
「はい!」
歩きだす二人の背中を、汐は少し悲しげな表情で見つめていた。
しかし、鬼の本拠地の名は伊達ではなく、あちらこちらから鬼が汐達に襲い掛かってきた。
汐はウタカタと呼吸を。炭治郎と義勇は水の呼吸を駆使し、先へと進む。
「ねえ、義勇さん」
何匹めかの鬼を倒した後、汐は義勇にだけ聞こえる声で話しかけた。
「何だ?」
義勇は怪訝な顔をしながら、汐の方を振り返った。
「奴の根城にいるせいか、さっきから殺意が沸き上がって止まらないの。今は何とか理性で押さえつけているけれど、本当は今すぐ鬼を殺したくて殺したくてたまらない」
汐は右手で自分の胸のあたりを掴みながら言った。
「それだけウタカタノ花の浸食が進んでいるみたいなの。完全に人じゃなくなったら、あたしは何をするか分からない。もしもあたしがおかしくなって、皆の敵になったら、その時は・・・」
――私を、殺してほしい
汐の言葉に、義勇は微かに眉根を動かした。