第12章 悲しみの底
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「それはプチトマトだったな まだ赤くはならないのか?」
「うん まだ実が小さいから…」
カーディガンを脱いで むき出しになっているカナコの肩に掛けて後ろから抱きしめる 思っていた以上にカナコの体は冷えていた
「イザベルが楽しみにしてたな」
「うん」
「見せたかったな」
カナコの肩に力が入りギュッと拳を握り体が固くなり小刻みに震えだす
「リヴァイ…どうして…」
どうしてここにいるの だと聞きたいんだろう
でもそれは言葉にならず 覚醒したカナコは唇を噛んでいる
「大丈夫だ 全部受け止めてやるから カナコもあの夜に俺にそう言って抱きしめてくれただろ?」
カナコの腕を優しく撫でても強張ったまま震えている
「私も…ファーランやイザベルのようにリヴァイの隣で戦いたい
でも私は弱いから……
2人みたいに強くなりたい
じゃないと弱い私はリヴァイの隣にいれない…リヴァイはここに居場所を見つけてどんどん先に行って背中が見えなくなっちゃうの…」
悲しみが溢れて夜に徘徊するようになり それを俺に知られてもなお 震える体に力を入れて泣かないように唇を噛み俯いている…
そんなカナコが弱いはずねぇ
腕の中にいる愛しさの塊を強く抱きしめた
「こんなクソみてぇな世界にいきなり放り込まれても カナコは自分に出来る事を見つけて一生懸命生きてきたんだろ 読み書きを覚えて裁縫も刺繍も沢山の本読んで必死に勉強して 今じゃ服を作れるくらいになってんじゃねぇか…」
俺は全部傍で見ていた
「一生懸命に頑張って生きているカナコの傍に居たいのは俺の方だ
クソみてぇに薄暗かった俺の世界を…カナコが変えてくれたんだよ」
キラキラと光る万華鏡を見て驚いた俺に「綺麗でしょ?」と言った笑顔
「面倒をみてやる」と言って差し出した俺の手を小さな手が掴んだ時
俺の世界は変わったんだ
「だからカナコ…我慢なんかするな
心が壊れるほどの悲しみだって俺が幾らでも受け止めてやる」
腕の中の強張っている体をカナコは俺に向け俺の顔を見た瞬間に力が抜けてペタリと石畳の上に座った
「やっと可愛い奥さんの顔が見れた」
カナコの頬を撫でると黒く大きな瞳が潤み月明かりを反射してキラキラと輝いた
やっぱりカナコは綺麗だ…