第10章 出発
【長距離索敵陣形】
完成された陣形だった 大部隊がひとつの生き物のように動いていた…
これを考え出したのがエルヴィンで 俺達の相手はかなり頭が切れる奴って事だ…
「あれだけ完成された陣形だと隊列を離れただけで目立つ…俺達は明日は後衛でエルヴィンは先頭だ…」
「あぁ…3人で離れるのは目立つな」
「そうだ 不可能に近い…今回は諦めて別の方法を考えた方が良さそうだな」
「兄貴…俺もそれがいい…」
勝ち気なイザベルが珍しく諦める選択をした
「アイツらと訓練とかさ 一緒にいて少し話をしてさ なんとなく分かったんだよ
アイツらが人類に心臓を捧げて壁外に出ていく理由 地下街で俺達が地上の世界を夢見る事に似てるんだ
俺は地下街でも どうしようもない位の最下層にいて草やゴミみたいなのを食べて生きていた それでも仲間や友達は地上に憧れて死んでいった だから俺も死んだ仲間や友達の為にあがいて…」
「外の世界を取り戻す為…巨人をぶっ殺しに壁外に出るのと…似てるか?」
「あぁ…兄貴は変だと思うかもしれないけど 俺はアイツらの邪魔はしたくない これから何度も外で暴れてほしい…って思った」
イザベルは純粋だ…死んだ仲間の思いと一緒に地上を夢見ている
エルヴィンの目も真っ直ぐに何かを見ていた だから言葉は胸に響くものがある
「別の方法で書類手に入れてさ…王都で暮らせるようになったら……また3人で豚商人からぶんどって……どうでもいいもんに…つか…うん…だ……」
「言いたい事だけ言って眠ったな…帰ったら別の計画を考えるか…明日も早いだろ リヴァイ俺達も寝ようぜ」
イザベルの寝顔を見ながらファーランはため息をついて横になった
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ナイルさんにはエルヴィンが手紙で私が残る事になった事を伝えてくれていた
壁外調査へ出発したみんなを見送った後に私が花壇の手入れに行くとモブリットも付いてきた
「カナコは看病係で俺はカナコの用心棒だからね」
そう言うと花壇に腰かけて手の届く範囲で草むしりをしてくれる
「下ろしたままだと足が浮腫んじゃうから 捻挫した足は花壇の縁に上げてね」
包帯が汚れないように持ってきたタオルを足の下に敷いた