第9章 壁外調査 前日
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「大好きな家族とこんな綺麗な景色を見ながら食べるパンは一段と美味しいね」
兵舎の食堂で出るパンはパサパサして不味い 市場のちゃんとしたパン屋のパンだから美味しいのは当然だが
確かにカナコが言うように今日のパンもカナコが剥いてくれたウサギのリンゴもオレンジも甘く感じた
隣に座りビールを飲んでいるファーランの顔もいつもより柔らかくカナコとイザベルを見ていた
俺も前を見ればカナコとイザベルが牛乳を飲み リスみたいに頬を膨らませパンをモグモグと食べている それを見ている俺の顔も同じように緩んでるんだろう 目が合うとカナコが柔らかく笑った
カナコがよく言う「小さな幸せ」が目の前に広がっていた
残したリンゴとオレンジは馬に食べさせ俺達は調査兵団に来てから初めてゆっくりとした休日を楽しんでいた
イザベルとカナコは食べ終わると花を見に行き 今はカナコが花を摘んで花冠を作っている それを隣でキラキラとした目でイザベルは見ていた
残された男2人で花ってがらでもなくシーツの上に座り ただぼんやりと景色を眺めていた
「明後日は壁外に出るって考えると緊張するもんだね…」
まったく緊張感の無い声でファーランが言う
「そうだな…早く終わらせてこんな 巨人巨人ってうるせぇ所から出ていくぞ」
花冠が完成してカナコがイザベル頭被せてやりイザベルは満面の笑みでカナコに抱きついていた
もうあの薄暗い地下街には帰らない
花冠を被ったままのイザベルがカナコに教えてもらいながら花冠を作っている
寄り添うように教えているカナコは優しさに溢れた顔をしてた
あの日の痣や傷は治りカナコの体は綺麗になった が 訓練から帰った直後に駆けつけたベットの上に寝ていたカナコ姿は まだ目に焼きついている
「仕事もだが…ヤツラも…」
拳に力が入る俺をファーランは真っ直ぐに見た
「リヴァイ…俺達がなんで調査兵団に入ったのか忘れてないよな?
最重要なのは書類 次がエルヴィンの始末だ カナコを襲ったヤツラの殺しは今回の仕事じゃない …」