第6章 想いが止まらない
「ハニー?」
「ごめ……っ!!」
バッと駆け出して急いで玄関のドアを開け、階段を駆け足で下がる。カラ松がハニーと叫んでいた気もするけど、そんなことも忘れて無我夢中で走り続けた。やっぱりカラ松と一緒にいてはいけないこと、兄弟が本気で心配していること、私があの人を愛してしまったこと、全てがもう後には戻れないくらい、あの人を本気で好きになってしまっていたことに気がついた私は、仕事着だったことも忘れて走り続けた。
どれくらい走っただろう、チラッと横を見るとそこにはマンションに併設されている公園で隣のベンチではカップルがイチャイチャしている様子が見られた。私は平然とその隣のベンチに腰掛ける。カップルは私が隣のベンチにいることに気がつくと、え?何?なんかあったの?とかなんとか言いながらその場を去っていた。
「ごめん。カラ松。」
ベンチで頭を下げて項垂れる。私は、とても贅沢をしていたんだと思う。カラ松と一緒に過ごせていること自体すごいのに、私はあの人を本気で愛してしまった。でもあの人には大好きな兄弟がいる。その兄弟からひき剥がそうとするなんて、最低だ。兄弟の元に返してあげないとあの人を元の世界にと思っていると、目から涙が溢れて止まらなくなってくる。
本当は帰したくなんかないし、ずっとこっちにいてほしい。いてくれると心のどこかで思ってしまっていた。でも現実は違っていた。カラ松が泣いた理由もなんとなくだけどわかる。私と兄弟を天秤にかけたのだろう。カラ松は一ヶ月後に帰れると知っているから、それを想って泣いてくれたのだと思う。私はカラ松をここに縛ってはいけない。本人が元いた場所に戻さないといけないんだ。私が幸せになってもカラ松の兄弟は幸せじゃない。あのむつ子は6人いるからすごいんだ!たくさん私もいい思い出作れたじゃないか。