第6章 想いが止まらない
「ハニーおかえりなさい。」
フワッと香るその匂いに包まれる。カラ松が私を愛おしそうにゆっくりと抱きしめてくれていた。なかなか退こうとせず、ずっと玄関で私たちは抱き合ってこのまま5分くらいが経とうとしている。
「カラ松、ただいま。どうしたの?」
カラ松の方をよく見ると目の下が赤いのが見えていた。目の下が赤いってことは泣いた…..?でもなんで?そんな疑問を持っているとカラ松が答えてくれた。
「実はな、今日怖い夢を見たんだ。ハニーがいなくなってしまう夢を見てな。」
優しくて私を慈しむような目で、髪を撫でる。その瞳の奥には、悲しみが宿っているような感じがした。
「カラ松……。私はどこにも……どこにも行かない!!ずっとカラ松と一緒にいるよ?」
そう私がいうとカラ松は私を強く強く骨が軋むほど抱きしめて、顔を埋めて泣いているようだった。
「怖いんだみちるがいなくなることが、嫌だ。いなくならないでくれ。」
「カラ松?夢?怖かったよね。私はどこにも行かないよ。」
子供をあやすような手つきで頭を撫でるとカラ松は安心したのか、私を居間まで連れていってくれた。
「みちる、これ。」
カラ松に渡されたのは「デカパンより」と書いてある手紙。私の体が一瞬にして強張る。一瞬で心の警鐘が鳴り響く。それを見たら終わりだと。これが真実なんだと突きつけられているようだった。
「実は、これ、ブラザーたちが書いたみたいなんだ。みちるにちゃんと紹介するのは初めてだが、多分知っているよな。」
「ああ……うん。」
カラ松の話はほとんど頭に入らなくなっており、ぼっーとしたまま手紙をめくる。そこにはカラ松を心配するおそ松兄さんたちの思いが次々と綴られていた。全員本気で心配している様子がこっちにも大きく伝わってきていた。わなわなと震え手紙をその場に落としてしまった。