第4章 素直 前編【※錆兎】
自分の隣で、考え込むように項垂れる錆兎を見て、宇髄はククッと小さく笑った。
「しかしよ、伝説の水柱・錆兎様も型無しだな。女一人、落とせないなんてよ。他にもいんだろ?お前が声掛けりゃ、ほいほい付いてきて、股開く女がよ。」
確かに錆兎にいいよる女なんて、たくさんいる。今までだって、何度も声をかけられた。若い女子隊員や、先輩のお姉様隊員。鬼から助けた少女や人妻まで。
少し声を掛ければ、尻尾振って付いてくる。
でもそんな女には、不思議と興味が湧かない。
自分にはけして靡かない女。善がらない、つまらない女。
他のやつからみたら、到底理解出来ないかもしれない。
でも…、
ただアイツの、小さく見せる反応に一喜一憂して、今、どんな顔してるのか?この肌を真正面から抱きしめたら、気持ちいいんだろな…とか、その可愛くて柔らかそうな唇に吸い付いたら、どんな気持ちになんだろ?とか、想像して…毎回、興奮してる自分がいる。
その感情の行き着く先は、なんとなくわかってる。でも、認めたくなかった。自尊心が傷つくのは、目に見えてる。
「あぁ〜、もうっ!!」
錆兎は頭を掻きむしると、宇髄を見上げた。
「なんか、気分が乗らない。今日は帰る。」
そう言うと錆兎は、肩に乗った宇髄の手を退かし、トボトボと自分の屋敷の方角に向かって、歩き出した。
その後ろ姿を見て、宇髄はニヤニヤ笑いながら、ポツリと呟いた。
「ありゃ、相当参ってるな。その女に。」