第4章 素直 前編【※錆兎】
ある日の午後、柱合会議からの帰り道。錆兎は自分の屋敷への道のりを、上の空で歩いていた。
「さ〜びとっ!!」
すると突然、後ろから肩にのし掛かられ、錆兎はびっくりして、振り返った。
「………あぁ、宇髄か。」
「これから、飲みに行かね?……ん?なんか元気ないな、どうした?」
そういえば、柱合会議の時から、少し元気がないような気がした。いつも気合い充分な錆兎には珍しい現象だった。
「いや、別にそんなことはない。」
自分でも、身が入っていないことには気づいていたが、平静を装って答える。
その事に気付いたのか、宇髄は話題を変えた。
「そういや、この間言ってた女、あれから、どうしたよ?ヒーヒー言わせてやったか?」
そう言われて、何のことだったか、一瞬考えた。そう言えば、この間の飲み会で、つい口を滑らせて、正体は言わずに陽華の事を相談してしまった事を思い出した。
善がらない、反応の薄い女を、満足させて、夢中にさせる方法を。
「あぁ、あれか。そういや、試してないな。…余計なことすると、キレられるからな。」
「なんだそりゃ。話聞いてた時から思ってたが、本当につまんねー女だな。」
「…つまらない?」
錆兎の身体がピクッと震えた。
「だって、そうだろ?自分が一生懸命、尽くしてやってんのに、悦ぶどころか、キレられたんじゃ、やり甲斐がねーだろうよ。」
確かに、やり甲斐のない女と言われれば、その通りだ。触らせない、善がらない、反応は少ない。自分から求めてくるわけでもなく、こちらを称賛すらしない。事を終えたら、さっさと帰る。
そこまで考えたら、反対に錆兎が聞きたくなってくる。
なんでそんな女と、関係を続けてるんだ?