第16章 初恋 中編【伊黒小芭内】
交差点に向かう途中、待ち合わせスポットとしても有名な犬の銅像をチラ見する。
すると、その銅像近くに見知った顔を発見して、小芭内は思わず足を止めた。
「氷渡!?」
気づいた瞬間、急いで近くの物陰に身を潜めると、小芭内は陽華に悟られぬよう、ゆっくりと物陰から顔を出し、その姿を確認する。
(間違いない…アイツだ)
見慣れぬ私服姿だが、間違いなく陽華だ。確信するとともに、こんな所で何をしているんだ?という疑問が湧く。そういえば、日曜日は用事があるとか言ってた気がするが……
(しかしアイツの格好…)
小芭内は改めて陽華の姿を、上から下まで確認した。
今日の陽華は、大きく肩の開いたカットアウトの、腹が見えそうなほど丈の短い白のトップスに、淡いピーチファズの色合いのハイウエストのプリーツミニスカート。そこからスラッと伸びた形の良い脚の先には、少し高めのヒールのついたバックストラップのサンダルを履いていた。
(あんな露出の高い服装で…)
さらに顔には薄っすらとメイクを施し、陽華の愛らしい顔立ちがさらに強調されていて、通りすがる男子達がチラチラと振り返るほどの注目を浴びていた。
よくわからないけど、苛つく。
(ここにいる男どもはわかってない。アイツは絶対にすっぴんの方がいい)
などと考えて、周りの男どもを睨みつける。
陽華はそんな小芭内に気付くこともなく、駅の方をチラリと確認し、手に持ったスマホの画面を覗き込む。恐らく時間を確認したのだろう。
しかしここにいると言うことは、誰かと待ち合わせをしているのだろうと推測する。
あんなオシャレをして、繁華街で待ち合わせるその姿に小芭内の胸がざわつく。
(誰と待ち合わせしてるんだ……、まさか……男と……)
小芭内がそのまさかを想定して、悶々としていると、駅の方向から現れた人影が陽華の前で立ち止まった。
「待たせたなっ!」