第15章 初恋 前編【伊黒小芭内】
「渡り廊下に先輩の姿が見えたんで、追いかけてきちゃいました♡」
「くそっ、至るところに湧いて、ボウフラのようなヤツだな。
お前、いい加減俺を追いかけ回すのは辞めろ。何度も言うが、俺はお前の冗談に付き合っている暇はないんだ。」
「先輩っ!!私は本気だって、言ってるじゃないですか。いい加減、信じてください!!」
「女など信用できん。お前らは自分を良く見せる為には平然と嘘を付くからな。」
「私はそんなことしませんっ!!」
陽華が鼻息も荒く自信満々に答えるが、小芭内はそれを冷ややかな目で見る。
「それにお前、俺の話を聞いてないのか?俺は女が嫌いだって言ったんだぞ?」
「聞いてました!でも、女が嫌いでも、私のことが嫌いだって、言ったわけじゃないですよね?」
まさかの物言いに、思わず小芭内の目が点になる。
「………お前、鏡を見たことがないのか?どうみても生物学的上、お前は女だろうが。」
「はい、女です。でも先輩?…先輩って、男性は平気なんですよね?いつもつるんでる不死川先輩の事はお友達として好きですよね?」
「まぁな。アイツは良いやつだからな。」
「じゃ、そこそこつるんでる鱗滝先輩や、幼なじみの煉獄杏寿郎君なんかはどうですか?」
「好き…だろうな。アイツらもかなりいい奴らだ。」
「では、冨岡先輩は?」
「嫌いだ。あのボソボソと喋る姿や、鼻につく上から目線の物言い。不幸を全部背負ってるかのような振る舞い。……きっと生理的に受け付けないんだろうな。」
「ほらっ!好きの中にも嫌いがあるんですよ?嫌いの中にも、好きが存在するかもしれないじゃないですか?」
小芭内の目がさらに点になる。
「…なんだ、そのどうしようもない屁理屈は。というか、俺の交友関係に詳しくないか?」
「だって私、先輩のことずっと見てますから♡でも先輩は私のこと何も知らないですよね?だから、知って貰いたいんです!先輩もそう言ってましたよね?もしかしら、先輩のツボにハマる何かが、私にも存在するかもしれないじゃないですか?」
「どれだけ、ポジティブなんだ。」
呆れたを通り越して、ちょっと称賛すら感じ始める。