第15章 初恋 前編【伊黒小芭内】
「それにまだ諦めたわけじゃないんでしょ?そんな親友に、真菰ちゃんがお兄ちゃんから情報仕入れてきたよっ!」
「ほんと!?」
パッと顔を輝かせる陽華とは反対に、真菰は得意げな顔を浮かべる。
「感謝してよね。あまりしつこく聞くから、お兄ちゃんに私が伊黒先輩を好きなんじゃないか?って、怪しまれて大変だったんだから!」
唇を尖らす真菰に陽華は「それはごめん」と頭を下げる。
そんな陽華に真菰は仕入れてきた情報を話し始めた。
「伊黒先輩ってね、頑固そうに見えて、実は押しに弱いんだって!」
「そうなの?」
「うん!お兄ちゃん達がイベントや遊びの計画を立てても、最初は乗り気じゃないらしいんだけど、結局最後は押されて文句を言いながらも着いてくるらしいよ。」
そこまで言うと、真菰は周りを確認しながら顔を近づけて、陽華の耳元で小さく囁いた。
「だから陽華もさ、がんがん押してみたらいいんじゃない?女嫌いって言っても男の子だもん。色仕掛けとかしたら、実は反応しちゃうかもよ?」
「色仕っ……、そんなことしたことないしっ!」
顔を真っ赤にして答えると、真菰はニコニコと笑顔を浮かべていた。
「でもさ、やってみる価値はあるんじゃない?」
「そう…かな?」
陽華が軽く首を傾げる。なんか潔癖そうで、反対に『破廉恥だっ!』とか怒られそうな気もしないでもない。
でも、しないで後悔するくらいなら…、
「真菰っ、私頑張ってみるよっ!」
真菰の手を取り、張り切って答えると真菰もぎゅっと手を握り返してきた。
「よーし、真菰ちゃんも全力で応援しちゃう!お兄ちゃんの友達に情報屋さんがいるんだって、私も伊黒さんの情報、たくさん仕入れてくるからね!張り切ってこー!!」
「おーー!!」
新緑の香る並木道に、可愛い女子二人の声が響いた。