第15章 初恋 前編【伊黒小芭内】
同学年には剣道部の二大エース、やたらと顔だけはいい冨岡義勇に、その親友で男気溢れる鱗滝錆兎。
そして、小芭内の親友でもある不死川実弥。一見見た目も言動もヤカラそのものだが、実は家族想いの一面を持ち、何かと面倒見が良いと人気が高い。
一学年下には、熱い性格とその人柄の良さで、老若男女から人気の煉獄杏寿郎。
隣の校舎にある大学部には、かつてキメ学の人気ランキングを総なめにした、イケメン芸術家の宇髄天元。キメツ学園の創始者である産屋敷財閥のご子息で、次期理事長と噂される産屋敷輝哉までいる。
どうみてもチビで万年マスク姿の、首に蛇を巻いた怪しい科学ヲタクに、告ろうなどと言う女子はいないだろう。
(それともあれか?俺から落として行って、あわよくば俺の周りのイケメン達をゲットしようと、そういうことか?)
なぜか小芭内の周りには、その人気のイケメン達が集まってくる。前世レベルでの因縁でもあるのか?その辺は小芭内にもよくわからないが、少なからずそういった関係で近づいてくる女子もいる。
つい最近も、『紹介してほしい』と近づいてきた女子を、ペットボトルロケットで返り討ちにしてやったところだった。
(……しかも紹介してほしい相手が、冨岡というのがさらに気にくわん。)
そんなことをグダグタと考えて黙っていると、痺れを切らした陽華が上目遣いで小芭内を可愛く見つめてきた。
「あの……先輩?…その……お返事…は?」
少し恥ずかしそうに頬を染め、不安そうに瞳を伏せる陽華を見て、小芭内は「フンッ」と軽く鼻を鳴らした。
(どうせ、自分が断られることなんてないと思ってるんだろうが、お生憎だ。)
「冗談なら、他でやれ。俺はそんなに暇ではない。」
小芭内は一言そう言うと、陽華に背を向けた。