第14章 進物・番外編 義勇誕生日記念【※冨岡義勇】
「いいえ!女子たる者、好きな殿方の前では、いつでも清い身体でいたいのですっ!私、先にお風呂に行って参りますっ!!」
別に一回目のときも、風呂には入ってなかったような気がするが?……と、義勇は不思議そうに首を傾げる。
しかし、自分も任務のあとで、冷たい川での行水は済ませたが、風呂には入ってない。
「そう…だな。……なら、俺も入る。」
「あっ、義勇さんも入りますか?では、お先にどうぞ。私、義勇さんの着換え、用意してきますね。」
妙がこんな時の為に、義勇の寝間着などの用意をしてくれていた。確か、寝室の方にあったはず。
取りに行こうと立ち上がると、その手を義勇が掴んで、引き止めた。
「待て、陽華。一人でじゃない、一緒に入る。」
「えぇっ!!な、何を言ってるんですかっ!駄目ですっ、私達にはまだ早すぎます!」
「なぜだ?一度、全てを見せあってる。問題ない。」
「問題だらけですっ!!」
だって、髪の毛や身体を洗う姿、そんな無防備な姿を見せるなんて、恥ずかしすぎる。ただでさえ、今日はいつもより入念に身体を清めようと思っていたのに。
「何の問題がある?」
「だって…処理とか…、色々と…確認事項もありますし……、」
(……確認事項?また訳の分からない言葉が出てきた。)
身体をもじもじとさせて、ブツブツと渋る陽華の手を、義勇はクイッと軽く引くと、じーっと陽華を見つめた。
「……駄目なの…か?」
まるで欲しい物を買って貰えなかった子供のように、何処か切なげに瞳を曇らせる義勇。その姿に、陽華の唇がワナワナと震える。
(ズ、ズルいです。私が義勇さんに頼まれたら、断れないこと…知ってるくせに。しかも…、)
そんな顔をされたら、余計にだ。
「わかりました。……でも、恥ずかしいので、あまりジロジロと見ないでください。」
「承知した。」
「それと……あの……、変なことしちゃ…駄目です。」
「………………承知した。」
どれが、どれくらい変なことに入るのかはイマイチわからないが、義勇はとりあえず、そう返事した。