第14章 進物・番外編 義勇誕生日記念【※冨岡義勇】
「ん?顔が赤いが、まさか熱でもあるのか?」
「っ!?」
気づいたら義勇の顔が間近にあって、心配そうに顔を覗き込んでいた。
「ぎ、義勇さんっ!」
「…やはり、あんな冷たい川に落ちたからか?」
慌てる陽華の額に手を伸ばし、前髪を掻き上げると、顔を近づける。
「んっ!」
おでことおでこがくっついて、陽華の心臓が信じられないほど、バクバクと波うった。
(きゃーー、義勇さんて突然こういうことをするから、心臓が持ちません!!)
「良かった、熱はないようだ。」
ゆっくりと顔を離して、陽華の顔を見る。すると陽華は顔をさらに真っ赤にして、瞳を潤ませながら、義勇を見つめていた。
(可愛い……)
突然、愛しさが溢れ、気付くと義勇は、陽華の身体を自分の胸へと引き寄せていた。
「……陽華、このあと、お前を貰うと言ったが…いいか?」
「(キ、キターー!)……あ、はい。」
緊張気味に小さく頷くと、義勇の身体にギュッと抱きついて、その胸に顔を埋めた。
久々にゆっくりと感じる、大好きな人の暖かな体温と匂い。
「義勇さんの匂い、好きです。なんか安心します。」
「そうか、俺もお前の匂い…好きだ。」
言いながら、陽華の額に頬を擦り寄せる。すると、陽華の身体がピクッと震えた。
(…匂い?……あっ、お風呂っ!!)
ふと思い出して、陽華はスンッと義勇から離れた。
「どうした?」
いきなり離れた陽華に、義勇が首を傾げる。
「私、忘れてました。義勇さんはまだ、匂いを嗅いではいけません。」
「?」
「狭霧山から、そこそこの距離を歩いてきたのに、きっと私、汗臭いです。」
「そうか?…特に気にならないが……、」
義勇が確認しようと身体を近づけるが、陽華がさらに離れる。