第14章 進物・番外編 義勇誕生日記念【※冨岡義勇】
義勇達が仲良く食事を堪能していると、開け放たれた廊下側の襖から、妙が顔を出した。
「じゃあ、私はもう帰りますね?」
夜8時になると、通いで来てる妙は自宅に帰ってしまう。陽華は急いで立ち上がると、妙に近づいた。
「妙さん、お疲れ様。今日も色々と手伝ってくれて、ありがとう。」
小さく礼を述べると、妙も嬉しそうに微笑んで、小さな声で返した。
「いえ、冨岡さんが喜んでくれて良かったですね。」
「うんっ!」
本当に嬉しそうに頷く陽華に、妙の心もほわほわと暖かくなる。今まで色々な相談に乗ってきて、本当の娘のように思ってきたからこそ、陽華が幸せそうにしているのを見るのは、本当に嬉しかった。
「では、明日はまた、いつもの時間に参りますね。」
「うん。妙さん、おやすみなさい。」
「はい、おやすみなさいませ。」
妙は部屋の中の義勇にも挨拶をすると、陽華に背を向けた。しかしすぐ立ち止まると、振り返り陽華に小さく耳打ちした。
『必要かと思ったので、お風呂…炊いておきましたよ♡』
『ふぇ、お風呂?』
『この後、貰われる予定でしたよね?なら、隅々まで綺麗にしなくちゃね?』
「うにゃっ、た、妙さんっ!!」
妙の言葉に、陽華が顔を赤らめる。そんな陽華の様子を見て、妙は朗らかに「ほほほ」と微笑むと、楽しそうに帰っていった。
「もー、妙さんてばっ、」
熱くなった頬を冷ますように、軽く深呼吸をすると、陽華は義勇に振り返る。すると義勇が不思議そうな目でこちらを見ていた。
「妙さん、何か言っていたのか?」
「あっ!い、いいえっ、なにも言ってませんっ!」
慌てて否定して、義勇の横に戻り座ると、赤い顔がバレないように俯く。
(妙さんが変なこと言うから、緊張してきちゃった。)
妄想でなら、いくらでも大胆に出来るが、いざ義勇本人を目の前にしたら、きっと緊張で予習通りに行かないだろう。