第14章 進物・番外編 義勇誕生日記念【※冨岡義勇】
いつも通り、義勇を居間で待たせると、陽華は妙と共に台所に入った。
持ってきたヌシを捌き、大根の皮を剝いて半月に切り、義勇好みの優しい味付けの鮭大根を煮立てる。
他にも妙の助けを借りながら、味噌汁やだし巻き卵、大根の皮を使ったきんぴらや、妙の自慢の糠床で漬けた糠漬けなど、何点かを定食風に仕上げる。
それを義勇の食卓に並べた。
「お待たせ致しました!どうぞ、召し上がってくださいっ!!」
「凄いな…、」
義勇の顔がパーッと輝く。
鮭大根だけが、ぽつんと出てくるもんだと思っていた。まさかこんなに仕上げてくるとは思っていなかった。
「卵焼き…、結構練習したんですけど、まだ上手く巻けなくて、少しいびつですけど、味は妙さん直伝なので、美味しいと思います!」
少し照れたようにはにかむ陽華を見て、義勇が胸がきゅんとなる。陽華も柱として忙しい身だろうに、自分の為の準備してくれていたのだと思うと、心底嬉しくなった。
「そうだな、美味しそうだ。ありがとう、陽華。」
「おかわりもありますので、たくさん召し上がってくださいっ!」
義勇は「そうか、頂くとする。」と、コクリと頷くと、まずは本命の鮭大根を手に取った。一口分箸で掴み、口に運ぶ。
「お、美味しい……、」
仄かな甘さの優しい醤油味で、大根も芯まで味が染みていて、鮭も臭みはなく、ほろほろと舌の上で解ける、懐かしい味……なのだが……、
(というか、鮭が上手い……、)
流石はヌシということなのか、脂のノリが良く、仄かな甘みの余韻だけを残し、すぐに蕩けて無くなってしまう。
「ヌシさん、美味しいですよね!私も味見して、驚きました。寒い川の中に入ったかいがありました!」
「そうだな。」と返すが、若干、『陽華の鮭大根』というよりも、『ヌシが主役の鮭大根』となってしまっている感は否めない。
しかし、本当に嬉しそうに微笑んでる陽華には言わずに、優しく微笑んで返す。