第14章 進物・番外編 義勇誕生日記念【※冨岡義勇】
その衝撃に陽華は「きゅ〜〜」と一声鳴くと、そのまま意識を失って、ピクリとも動かなくなった。そのまま、川に流されていく。
「陽華っ!!」
その姿に慌てた義勇が、川の中に飛び込む。
幸いすぐに陽華の身体を捕まえることはできたのだが、滝の近くの水は流れが早く、義勇は陽華の身体を抱えたまま、滝の中へと飲み込まれて行った。
どれくらいもみくちゃにされて、流されたのだろうか。いかに柱と言えど、落とされ慣れた滝壺であろうと、2月の極寒の中の川は、体力と気力を持っていかれる。
漸く浅瀬に流れ着いた時、義勇は最後の気力を振り絞って、陽華の身体を抱えながら、川辺と這い上がった。
「陽華、大丈夫か?」
「けほっけほっ!すいません、落ちた拍子に頭をぶつけて、一瞬意識を失ってしまいました。」
陽華が後頭部のたん瘤を擦りながら、義勇に謝る。
「無事なら、それでいい。さっさと小屋に帰ろう。身体を温めないと風邪をひく。」
「ふぁい。」
義勇が陽華の手を取って、立たせてくれるが、まだ頭がモヤッと重たい。いったい何と打つかったのだろうか?
そう思いながら、義勇の背後の川に目をやる。すると、陽華のモヤッとする視界に、銀色の物体が映り込んできた。
「ふぁっ!?義勇さん、大変ですっ!」
浅瀬に打ち上げられた大きな銀色の大きな魚。慌てて近寄ると、その姿は滝の上で見た奴で間違いなく……、
「こんなところに、ヌシがいますっ!」
なぜこいつがここに?陽華が不思議に思って、顔を近づける。するとヌシの頭の部分に、大きなたん瘤を見付けた。
「ぎ、義勇さん!?……私、ヌシと打つかったみたいですっ!!」
幸か不幸か、禍転じて福となすか?かくして、伝説の鮭・狭霧川のヌシを手に入れた陽華と義勇は寒さに震えながら、鱗滝の小屋へと避難した。
まさかのヌシを抱えて帰ってきた二人に、鱗滝は腰を抜かす勢いで驚いたが、すぐに二人の為に小屋を温めて、湯を炊いてくれた。