第14章 進物・番外編 義勇誕生日記念【※冨岡義勇】
義勇は頬を軽く上気させたまま、真剣な面持ちで陽華の目を見つめた。
「お前がただ一言「はい」と言って頷いてくれるのなら、いつでもお前を受け入れる準備が出来ている。」
「はぅっ!?義勇さん、それって…、」
きゅうこんと言うやつでは!?
まさかの展開に、陽華の口が泡々パクパクと震える。
「だから、ヌシの事はもう忘れろ。それよりも俺は、少しでも早くお前と…二人きりになりたい。」
義勇の熱を帯びた瞳が、陽華の瞳を捕らえ、ゆっくりと近づいてくる。
「ぎ、義勇さん…だめです、こんなところで……破廉恥です!」
「安心しろ。こんなところ、誰も来やしない。お前はもう黙って、俺にだけ集中してればいい。」
顎をくいっと摘まれ、少し上向きにされると、義勇の唇が再度陽華へと近づく。
久しぶりの抱擁、陽華は自分の心臓がドキドキと波打つのを感じながら、瞳を閉じると、静かに義勇の唇を待つ。
少しだけ強張った唇に、ゆっくりと義勇の温もりが触れる……直前の事だった。
バシャンっ!
陽華の背後の川で、何か巨大な物が大きく飛び跳ねた。
「あっ、ヌシですっ!!」
音に反応した陽華が、慌てて身体を川の方へと向ける。すると…、
「あっ、いきなり暴れるなっ。」
完全に気を抜いていた義勇の手が緩み、陽華の身体がその手からスルリと抜け出る。その先は勿論、冷たい真冬の川の上で…、
「きゃっ!」
陽華は脚が岩場から滑る。慌ててくるりと体制を変え、義勇の手を掴もうと藻掻くが、その行為も虚しい抵抗に過ぎず……、
バシャン!
陽華は背中から、川の中へと落ちていった。
「冷たっ!?」
容赦なく襲いかかる、2月の冷たい川の水、そしてさらに……、
ゴンッ!!
「い"たっ!!」
同時に陽華の後頭部に、何か固い物がぶつかった。