第13章 進物 完結編【※冨岡義勇】
さらに高ぶった感情は留まることを知らず、義勇は重ねた唇をさらに押し付けると、割り開いた隙間に舌を差入れ……、
「んにゃーーー!待ったっ!ちょっと待ったです!!」
陽華の両手が、力のかぎりに義勇の身体を押し返す。
すると義勇は漸く目が覚めたようにかのように、ハッとした表情で陽華を見下ろした。
「陽華、俺は…、」
義勇が慌てて身体を離すと、軽く頭を下げる。
「す、済まないっ、」
長年拗らせた片思いと禁欲の日々が裏目に出たか、とんでもない失態をやらかしてしまった。
「ぎ、義勇さんの甘え方、ちょっと刺激が強すぎましたっ!」
陽華も慌てて起き上がると、少し乱れた衣服を整え、先程からうるさく鼓動を打つ胸を強く抑えた。
「本当に済まない、陽華。俺としたことが、自分を見失った。」
一方的に自分の欲望を押し付けて、陽華をめちゃくちゃに傷つけてしまうところだった。
反省するように項垂れる義勇の横で、陽華はドギマギと視線を泳がせた。
「いや…私もその……、ちょっといきなりだったので、焦ってしまいまして…、」
まずい、義勇と目が合わせられない。こんな経験は初めてな上に、それにさっきの義勇の……、
(義勇さんの目…、色気が凄かった!!)
目も合わせずに、一人心の中で静かに悶える陽華の姿に、義勇の顔に焦りが滲む。
(……まさか、嫌われたか?)
義勇の胸が、チクリと痛む。
「…今日はもう、帰った方がいいな。」
ここにいたら、自分が何をするかわからない。これ以上は嫌われたくはない。
「え?…帰っちゃうんですか?」
「あぁ…、これ以上、お前を傷つけたくない。」
義勇が立ち上がろうと腰を浮かす。すると陽華が慌てて義勇の羽織の裾を掴んで引き止めた。
「まっ、待ってください!………私まだ、義勇さんと一緒にいたいです!」
義勇が驚いた顔で振り返ると、陽華は寂しそうな顔で義勇をみつめてきた。
「義勇さんは夜もお仕事ないって、お館様の手紙に書いてありました。だから……まだ…、帰らないでください。」
「だが、しかし……、」
「だって、今さよならしたら、今度はいつ会えるのか、わからないじゃないですか!」