第13章 進物 完結編【※冨岡義勇】
悲しげに瞳を揺らして見つめてくる陽華に、義勇の胸が痛いほどに跳ねる。
そんなの義勇だって、同じ気持ちだ。だが…、
「これ以上お前と共にいれば、俺は自分を抑えることが出来なくなる。」
「私、もう大丈夫ですっ!さっきはいきなりだったから、ちょっと戸惑いましたけど……、私……義勇さんなら、何をされても構いませんっ!」
陽華の言葉に義勇が驚いた顔を見せる。
「お前、意味がわかって言ってるのか?」
「義勇さんこそ、わかってません!……私、もう十九になりました。普通の女の子なら、お嫁に行っててもおかしくない歳です。」
鬼殺隊という部隊に所属してなければ、陽華ももうとっくにお嫁に行っている歳だ。もしかしたら、遅いくらいかもしれない。
「早い人はもう、お母さんしてる人だっています。意味だって…何をするのかだって、わかってます。……いつまでも、私を子供扱い、しないでください。」
「陽華、お前……、」
陽華の覚悟に義勇の胸が熱くなる。堪らずにその身体を優しく抱き締めた。
「本当に、俺でいいのか?」
義勇の胸の中で陽華が静かに首を振る。
「義勇さんじゃなきゃ……いやです。」
「っ、……お前の気持ちは…わかった。」
義勇は覚悟を決めると、陽華の身体をひょいっと抱き上げて立ち上がった。
「ぎ、義勇さん?」
驚く陽華を抱き上げたまま、部屋の中に入ると、敷いてあった布団の上に陽華を優しく降ろす。
そして再度立ち上がり、縁側に面した障子をピシャリと閉じると、振り返る。
「始まれば、止めることは出来ないかもしれない…、覚悟は本当にいいんだな?」
そんなことを問われれば、勿論まだ戸惑っている。でもきっと、後悔することは絶対にない。
コクリと頷くと、義勇は陽華の前に膝をついて座り、その両肩を優しく掴んだ。
「責任は必ず取る。」
陽華の瞳を見つめ、真面目な顔で言う義勇に、頰を赤らめながら小さく頷く。それを確認すると、義勇は陽華の身体を優しく引き寄せ、静かに唇を重ねた。