第13章 進物 完結編【※冨岡義勇】
「陽華、有難う……、」
陽華の首筋に顔を埋めたまま、消え入りそうな声で小さく囁く。
すると突然、陽華が義勇の頭を優しく撫でた。義勇が驚き、顔を上げる。
「何をしている?」
「…甘やかすなって言うけど、義勇さんもたまには甘えたいかなぁ?って…、」
別に甘えたくて言ったわけではないのだが、相変わらず予想だにしない行動をしてくる。
でも陽華の他意のない、優しい笑顔を見ていると、そんな気持ちにもなる。
「甘えていいのか?」
「はい、大丈夫です!義勇さんが甘えたいのなら、ドンと来てくださいっ!私、甘えん坊の弟の面倒を良く見てたので、そういうの得意なんです!全力で受け止めます!」
(……俺は、幼い弟と同類か?)
そんなことが頭に過るがしかし、甘えていいのなら、その好意に甘えない手はない。
「なら少しだけ、甘えさせて貰うが、……覚悟はいいんだな?」
「ん?かくご…?」
訝しげな表情を浮かべる陽華の首筋に、義勇は再度、甘えるように擦り寄ると、その首筋に優しく口づけた。
「ひゃあっ!な、何してるんですか!?」
「甘えていいと言うから、そうさせて貰っている。」
「でもなんか…ちょっと違っ……、うにゃっ!」
首筋をペロッと舐められ、おかしな声が漏れ出る。
(え?え?甘えるって、こんなかんじだったっけ?)
ぐずる弟をあやすように、抱きしめて背中を『ぽんぽん、よしよし』的な物を想像していたのに、まったく違う。
「変な声を出すな。これが大人の甘え方だ。」
「そ、そうなんですか!?な、なんか、刺激的ですっ!」
(…素直に、信用してしまった。)
純粋な陽華を騙すようで、少し胸が痛むが、あとほんの少しだけ……、
今日が終わったら、また任務任務の毎日で、ゆっくりと会えることはなくなる。柱はそれぐらい忙しい。
だから今は、少しでも長く陽華の温もりを感じていたかった。