第13章 進物 完結編【※冨岡義勇】
「だから、任務前や強い鬼と対峙して不安になったり、苦しい時は、この傷に触れて囁くんです!『私は大丈夫、負けない。家族の分も頑張って、生き抜いてみせる。』って」
「陽華…お前……、」
「そんなこと繰り返してたら、癖になっちゃったのか、ちょっとした不安や、勇気が欲しい時なんかも触るようになっちゃいました。治さなくちゃいけないとは、思ってるんですけど……、」
そう言って、屈託なく笑う少女を見て、義勇は心が揺さぶられるほどの衝撃を受けていた。
そして改めて思い知る、氷渡陽華という少女の、この自分の腕に包まれてしまうほど小さな少女の、自分では到底太刀打ち出来ぬほどの、大きな強さを……、
「……本当にお前は強い。俺なんかより、よほど……、」
「そうですか?でも、そう思えるようになったのは、義勇さんのお陰です。」
「俺の……?」
「はいっ!!義勇さんは出会った時からずっと、私が迷わないように、道を照らし続けてくれました。だから私は、迷わずに前に進み続けて来れたんです。」
「そう…か……、」
「だから、心の底から尊敬してます!それに……大好きです!」
”きゃー、言っちゃった!”とばかりに顔を赤くして俯く陽華。
義勇は自分の胸が苦しいくらいに熱くなるのを感じた。それと同時に目頭が熱くなり、義勇はそれを隠すように陽華の首すじに顔を埋めた。
どうしていつもこの娘は、自分が欲しいと思う言葉をくれるのだろうか。
「お前、あまり俺を…甘やかすな。」
「ん?甘やかす?」
陽華が不思議そうに首を傾げる。
「俺も同じだ……、お前がいてくれたから……、」
強くなろうと思えた。
この笑顔を守るために、生きたい思えるようになった。
そして、蔦子姉さんの死からも、錆兎の死からも立ち直ることが出来た。