第13章 進物 完結編【※冨岡義勇】
「お前の身体、暖かいな。…さっきまで、寝ていたからか?」
「そ、そうですか?」
まさか口づけで身体を火照らせたとも言えずに、慌てて答える。
「それとも…まだ子供だからか……、」
義勇がそう呟くと、陽華は顔をあげて、心外そうな顔で義勇を睨んだ。
「もう!私、子供じゃありませんっ!」
陽華が怒って、握られた手ごと、義勇の胸をポンポンと叩く。
「落ち着け、冗談だ。」
義勇にその手を軽く拘束されるように引き剥がされると、陽華はぷぅっと、頰を膨らませた。
(そんなところが、子供なんだがな…、)
けどそれも陽華の魅力ではあるのだが。義勇はこれ以上は怒らせぬよう、笑いを堪えながら、微笑ましく見る。
その時丁度、掴んだ手の寝間着の袖がヒラリと捲れて、陽華の古傷が顕わになり、義勇の意識がそちらに向いた。
「この傷…、あの時のか?」
「あ……そうです。義勇さんに助けて貰った時のです。」
綺麗な白い肌にありありと残る切り傷を見て、義勇の顔が曇る。
「傷跡が残ってしまった。俺の処置が甘かったせいだ、まだ痛むか?」
あの時、傷の処置を施したのは義勇だったから、はっきりと覚えている。義勇も若かったせいか、傷の手当にはまだ不慣れだった。
「いえっ!義勇さんの処置は完璧でした、痛みはもうないです。」
「だが…たまに触っているだろう。」
今日もその前も、幾度か触っているところを見たことがある。
「あ…これですか?」
陽華がいつもさわるように傷口に触れると、義勇がコクリと頷く。
「これは違うんです。痛いから触ってるんじゃなくて、おまじないみたいなものです。」
「まじない?」
「はい。この傷に触れると、家族を思い出すんです。……私の家族、私を守って、皆死んじゃったから、」
陽華の脳裏に、あの日、自分を守って死んで行った家族の姿が思い起こされ、瞳が陰る。
「でもだからこそ私、家族の分まで生きなくちゃいけないって、思うんです!」