第13章 進物 完結編【※冨岡義勇】
ちょっと照れて黙り込むと、義勇の目には陽華が拗ねてしまったように見えたのか、切なげに表情を曇らせた。
「そんなに…嫌だったか?」
「え?」
「お前が本当に嫌なら、もうしない。」
そう聞かれれば、勿論、嫌なわけがない。ただ唐突に訪れたこの状況に戸惑い、どうしていいかわからないだけで…、
「嫌なわけ…ないです。ただ…まだ心の準備が出来てなくて……、」
「なら、もう一度してもいいか?」
「ふぇっ!?」
この答えで、どうしてそうなる?
そんなことを思い、少し戸惑いながら俯く。
(恥ずかしい…けど……、)
自分だって、本当は義勇に触れたいし、触れられたい。だって、それをずっと夢に見てきたのだから。
陽華は覚悟を決めると、義勇に向けてクイッと口角を上げ、その瞳をキュッと閉じた。その必死の様子に、義勇の顔が緩む。
(…可愛いな。)
その姿を愛おしく思いながら、義勇はゆっくりと顔を近づけると、その強張った真一文字の唇に、今度は優しく唇を重ねた。
「っ…、」
その感触に陽華の身体が小さく反応すると、義勇は手首を掴んでいた手を緩め、今度はその手を、包み込むように優しく握り締めた。
そして陽華の緊張を解すよう、優しく食むように唇を重ねていく。
その唇から義勇の想い、優しさが伝わってきて、陽華の身体から、ゆっくりと緊張が解れていく。
(なにこれ、気持ちいい……、)
味わったことのない心地よさ、陽華はそのまま暫くの間、その心地よい感触に身を委ねた。
そうして、少し長めの口づけが終わり、陽華は苦しそうに息を吐き出しながら、義勇の顔を見つめた。
「なんかいいな、これ。」
義勇に問われ、陽華はコクリと頷くと、恥ずかしさに義勇の胸に顔を埋める。
(はぁ…、なんか…身体が熱い……、)
今まで感じたことのない火照りのような物を感じて、陽華は額を義勇に押し付けると、もぞもぞと動いて、その身体を擦り寄せた。
その仕草がまるで甘える子猫のようで、義勇は堪らず、背中に回した手に力を込めると、陽華の身体を抱き寄せた。
そこから感じる、お互いの心地よい体温。