第13章 進物 完結編【※冨岡義勇】
(私……義勇さんに、触れたい……、)
陽華は立ち上がると、ゆっくりと義勇に近づいた。手の届く範囲まで近寄ると、恐る恐るその手を掴む。すると…、
「きゃっ!!」
いきなり、その手をグイッと引かれた。陽華はフラッとして身体の向きを変えると、背中から義勇の腕の中へと落ちていった。
「あ、やだっ!」
義勇の胡座をかいた足の上に、横乗りで乗るような形になってしまい、驚いて脚をバタつかせる。
「こら、暴れるな。」
「だってっ、取って食ったりしないって……、」
「食うわけじゃない。これくらいなら、別に構わないだろ?」
「で、でもっ!!…か、顔が近いですっ!」
陽華が慌てて義勇から、顔を背けると、義勇がその顔を覗き込む。
「どうして反らす?この顔が好きだと言っていた。」
「好きですけど、好きだからこそ、無理です!!」
今度は慌てて顔を両手で覆う。
普段は反対に、こちらを慌てさせることばかりするのに勝手なヤツだと、義勇が呆れ顔でため息をつく。
「…陽華、こっちを見ろ。」
「うぅ……、」
恐る恐る顔を上げ、潤む瞳で義勇を上目遣いに見つめる。
すると次の瞬間、いきなり近づいてきた義勇の唇に、唇を塞がれた。
「んーーーー!!」
陽華が思わず、義勇を引き離そうと、左手で肩を掴み押し返す。しかしその小さな抵抗も、あえなく手首を捕まれると簡単に引き剥がされる。
「んっ、んーー!」
そのまま暫くの間、義勇に唇を奪われ、
やがて満足したのか、義勇が離れると、陽華は信じられないと言った表情で、義勇を見た。
「嘘つきー!食ったりしないって言ったのに、いきなり食べられましたー!」
「仕方ない。お前が可愛い顔で見つめてくるからだ。」
(か、可愛い…、)
悪びれもせずに淡々と答えると、陽華の顔が真っ赤に染まる。
(可愛いって、言われちゃった……、)