第12章 進物 後編【冨岡義勇】
「お前は本当に、正直なヤツだな。」
「へ?」
「だが…そういうところも全て含めて、俺も…お前が好きだ。」
「ぎ、義勇さんっ!」
そんなに改めて言われると恥ずかしすぎて、どうしていいかわからない。義勇の顔が見れずに、顔を真っ赤にさせて俯く。
そんな陽華の可愛らしい姿に、堪らなく愛おしさを感じて、義勇は思わず、陽華の肩を掴んでその身体を自分の元に引き寄せた。
「きゃっ!」
突然、義勇の胸に顔を埋めるような形になり、陽華の身体が緊張で固まる。
(こ、こんなところでっ!)
だが、拒むことも出来ず、陽華は戸惑いながらも、ゆっくりと義勇の腰に手を回し、ギュッと抱きついた。
こんな夢みたいなこと……、
いや…夢かもしれない?
夢だろ、寧ろ。
そんなことを考えて、ぼーっとしていると、
「陽華…?」
優しく名前を呼ばれて、反射的に顔を上げる。
「その…、いいか?」
微かに頰を上気させ、義勇が問いかける。
いいか?……何を?
頭が回らず、よくわかんないけど、とりあえずコクコクと頷いてみる。
すると義勇は、陽華両肩を優しく掴んで軽く引き剥がし、その顔に被さるようにゆっくりと顔を近づけてきた。
(えっ…嘘……、まさか…これって…、)
まさかの展開に、思わずギュッと瞳を閉じ、口を真一文字に閉じた。
その強張った唇に初めて触れる、優しく暖かく、そして柔らかい感触。
(きゃーー!義勇さんの唇…、柔らかっ!!)
その数秒後、ゆっくりと義勇の顔が離れて行くと、陽華はこれ以上ないくらいに、顔を真っ赤にさせて、涙目の上目遣いで義勇を睨んだ。
「義勇さん…、その…破廉恥です…。」
陽華が余りの恥ずかしさに小さく呟くと、義勇はフッと小さく笑った。
「こんな所、誰も通りはしない。」
確かに陽華の屋敷は、街からも外れていて、周りにも木々が生い茂っている為、人目にも付き難く、めったに人が通ったりすることもないのだが……、