第12章 進物 後編【冨岡義勇】
「…わかりません!……誰かが道に迷ったりとか、ひょっこりと現れるかもしれません。」
顔を真っ赤にしながら、反抗するように答えると、義勇は辺りを見渡した。
「確かにな。そういうことも、あるかもしれない。……なら、もう一度試してみるか?」
「え?」
「……誰かが…通るのか、通らないのか。」
義勇が何かを企むように、薄く微笑む。その真意に気づいた陽華が、目を見開いて慌てふためく。
「ま、待ってください!!二回目はまだ…心の準備が……、」
「心の準備など、一回目もしてなかっただろ。」
慌てる陽華の顔に再度、義勇の顔が近づいてくる。
(きゃーー!一回だけでも頭がどうにかなりそうだったのに、二回もなんてっ……、)
混乱で頭が沸騰しそうになる。
そんな陽華の視界が、突然、ふにゃりと揺れた。
(あれ…?なんだろ…なんかふわふわしてる……、)
今度は頭がふわりと揺れた感じがして、そして今度は…身体がグラッと揺らぐ……、
「おい、陽華っ!」
崩れ落ちそうなるのを、義勇が慌てて支える。
「あ……義勇さん……、私なんか…おかしいです……、」
「どうした?」
「わかりません、なんか頭が……ふわふわ…して………、あっ…私っ!……そう言えば今日…、まだ一睡も…して……なかったんだった…、」
任務帰りで、休むことなく義勇と出かけ、一日中はしゃぎまくった上に、最後にこんな驚きと嬉しさが同時に来て、身体と頭の処理能力が限界を迎えたのだ。
「ごめん…なさい、義勇さん、……私…限界…みたい…です……、」
「陽華、しっかりしろ!?」
驚く義勇の胸に、凭れ掛かるように顔を埋めると、陽華はそのまま、ゆっくりと意識を手放した。
ー 進物 後編 完
→完結編へと続く