第12章 進物 後編【冨岡義勇】
陽華の言葉に、義勇が驚きにも期待にも満ちた表情で振り返る。
しかしすぐに思い直したのか、悲しげに瞳を伏せた。
「……だが、お前の好きは所詮、恩人としての俺で…、」
「恩人だからじゃありません!」
陽華は慌てて、義勇の元へと走り寄った。
「それは…出会った頃は、憧れの方が強かったですけど、鬼殺隊に入って、義勇さんに触れていくうちに……その…、」
陽華は恥ずかしげに頰を赤らめると、誤解のないよう、自分の本当の気持ちを伝えるよう、精一杯丁寧に言葉にしていく。
「勿論、義勇さんの強くて格好いい所は、昔から大好きなんですけどっ!
優しい所も大好きだし、不意打ちで見せる笑顔なんか、もう最高にドキドキしちゃうしっ!!
ちょっと抜け…天然な所も、不器用な所とかも、失礼かもしれないんですけど……可愛いな?って思うし……、
だから、そういうところも全部含めてっ、大好きです!」
陽華の包み隠さない物言いに、今度は義勇の顔が赤くなる。
大人の男が可愛いなどと言われて、顔を赤くする姿など、気持ち悪いと自分でも思うが……、
しかし今は、それよりも何よりも気を抜けば、顔が緩みそうになるくらい嬉しくて……、
「陽華、感謝する。お前の本当の気持ちが聞けて俺は……、」
「あっ、それとっ!」
陽華の顔がさらに赤くなる。
「その……、顔が……、」
「顔?」
「はい、めちゃくちゃ…好みです♡」
「・・・・・・・そ、そうか。」
なんだろうか、顔が好きと言うことは、恩人としてでなく、義勇個人を好きだという証で、喜ぶところなのだろうけど、なぜか釈然としない気持ちになる。
しかし、やはり今は、この顔に生まれて来たことを両親に感謝すべきなのか?
(それにしても……、)
思わず、クスリと笑ってしまう。
こんなことも包み隠さずに全て言ってしまう。それも実に陽華らしいと言うか……、