第2章 情欲【※不死川実弥】
もう止まりそうにない実弥の頭を、陽華は鷲掴みすると、力任せに引き剥がした。
「こら、髭が痛いっ!もうっ、盛ってないで、早く顔洗って、剃ってきなさいよ。」
そう言うとは陽華は、実弥の身体から、スルリと抜け出た。
実弥は舌打ちすると、渋々と起き上がり、洗面所に向かって歩き出した。
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実弥が髭を剃り終わり、顔を洗っていると、陽華が後ろから声を掛けてきた。
「ねぇ、実弥。…これ何?」
顔をタオルで拭き、背後に立った陽華に鏡越しに視線を合わせると、陽華はその手に持ったレンタルDVDのケースをチラつかせた。
「っ!!(げっ!!昨日、陽華が来る前に観てたAV!)」
若干焦り気味な表情を浮かべる実弥を、陽華はニヤニヤしながら見た。
「やらしー、こんなの観てたんだ?」
「んだよォ。お前が俺を放って、飲みに行くからだろォがァ?……俺だって、自分を慰める道具くらい…、」
「うーん、別にいいんだけど…。」
陽華はDVDのケースを見て、タイトルを確認すると、さらに意地悪そうな顔で実弥を見た。
「不死川先生、これ、女教師物だよね?」
「うっ!」
「誰を想像してたのかなー?って。」
上目遣いで、問い詰めるように実弥を見つめる。
その腕を実弥は掴むと、自分の正面へ引き寄せ、洗面台を背に立たせた。
逃さないように、囲うように両手を洗面台に置き、小さく呟いた。