第12章 進物 後編【冨岡義勇】
だが陽華は、それでも負けじと真正面から義勇の顔を見つめ返した。
「あのっ!!じゃあ…今から…説明します!…あの鐘は……、」
言え!鐘を一緒に鳴らす意味も、自分の本当の気持ちも……、今こそ、義勇さんに……、
(頑張れ、陽華っ!)
(頑張って、陽華さん!)
外野で見ていた天元としのぶも、心の中で叫ぶ声援に力が籠もる。
「あの鐘は……その……、あれは…………あっ…そうっ!!あれは…幸運の鐘なんです!!」
その瞬間、外野の二人が完全にズッコケる。
「幸運の鐘?」
義勇が首を傾げて、聞き返す。
「はいっ!…あの鐘は、鳴らす者に幸運を与えてくれる幸運の鐘なんです!……やっぱり、こんな物騒な仕事してるから、担げる験担ぎは、何でもやっておこうかな?って……」
笑顔でいいながらも、陽華の心はガクッと項垂れる。
(ってぇ、何言ってるの、わたしぃ〜!!……でも、やっぱり言えないよぉ!)
陽華の説明に、義勇が穏やかに微笑む。
「そうか。なら俺も、担げる験は担いでおくか。」
「は、はいっ!」
義勇の返事に力強く頷くと、二人は仲良く鐘と向き合い、吊り下がる綱を掴んだ。
(なんか、義勇さんを騙したみたいになっちゃったけど…、いつかは本当の気持ちを…伝えますから……、今は許してください。)
陽華はそう心の中で義勇に謝罪すると、申し訳なさげに義勇に視線を向ける。